【最初の一年】母乳育児は当たり前ではない
妊娠が分かったら皆さんそれぞれ最初に気になる事がかなり違うと思いますが。
今回は母乳育児について話してみたいと思います。
多くの妊婦さんは「出産」についてのことを沢山調べます。私もそうでした。以前書いたように出産レポを100件近く読んでいます。
母親学級、両親学級などでも出産時にどう対応するか、赤ちゃんの沐浴はどうするかなどを中心に教えてくれますよね。確かに授乳を事前に練習することは出来ないです。
出産については周りから語られる話も多いので、どうしても出産そのものに注意がいきがちですし、退院後育児が始まると赤ちゃんに合わせてとにかく朝晩目まぐるしいスケジュールが組まれているので、経験を詳しく共有したりする場も少ないのが事実です。
皆んな今大変なんだろうなって推測するくらい。
そして授乳がどう進んでいるかについて聞くこともあまりありません。何となくですが、とても聞き辛い話で、母乳育児が上手くいかないと変な罪悪感と後ろめたさが付きまとっていたりするようで、あまり共有されないのかなとも思っています。
母乳育児はWHOからもそうですし、とにかく赤ちゃんに最高の栄養と免疫を与えられる手段として進められてますね。
なので、ママになったら自然に母乳で育てようとなんとなーく思う人が殆ど。これはまた出産に似ていて、多くの人が自然分娩したいと思うのと一緒だと思います。
確かに母乳育児には数多くの利点があり、出来ればやった方がいいのは事実ではあります。でも母乳育児中のママの現実ってどれくらい知られているのでしょうか。
出産する前の授乳のイメージはお母さんが赤ちゃんを抱っこして、とても愛おしい雰囲気の中で行うというものでした。
正に赤ちゃんとの愛着を形成していく大切な時間、ですね。確かに、それが間違っているとは言いませんが、今考えるとかなり美化されているイメージだけが世間一般で共有されている。
今こそ思うことですが、もし私が育児が始まるまでに授乳に対するイメージをそのまま維持していたなら、母乳育児は絶対失敗していたと思います。
幸いにも、妊娠も8ヶ月を過ぎていたある日のこと。
偶然知り合った先輩ママから、聞いてもないのに授乳についての警告を受けました。
「今は出産のことで頭がいっぱいだと思うけど、出産なんて一瞬だよ。私に言わせれば授乳の方がずっと大変。結構辛いから今から覚悟しておいた方がいいよ。」と。
「産院はどこなの?」
まるママ:「愛育病院です。」
「そうか。じゃ多分大丈夫だね。愛育病院は母乳育児厳しいらしいから。」
今思い出せば、なんのことだろうと、当時はあまり想像がついてませんでした。
でもとりあえず家に帰ってきて授乳の仕方などについてYouTubeで調べることに。
なるほど、乳首をそうやって赤ちゃんの口に当てるのね。
軌道に乗るまではあまり上手くいかないこともなるのねーなど。
一応頭では理解したつもりで出産を迎えました。
そして出産後間も無く母乳育児が始まると。。。
私は自分の体が完全に「動物化」し始めたことに気がつきます。
赤ちゃんはお腹が空くと激しくなき、胸を顔に当てるもののなかなか上手く吸うことができずもがき始める。
言葉そのままですが、あまりにも頑張り過ぎて赤ちゃんはそれこそ顔が「真っ赤」になって泣きながら怒っている。
なんとか口に当てて吸い始めても、母乳が上手く出てこなかったり姿勢が不安定だったりと上手くいかない。
出産と同じで、授乳もまた赤ちゃんとママの共同作業であり、自分が頑張るから上手くいくものではなかったのです。
赤ちゃんはまだまだ未熟で私に頼り切ってはいるものの、一人の個体として、独立して存在する人間。
だから自然分娩と同じで「出来たら最高」だけど、上手くいかなくてもある意味「仕方のないこと」でもあり、母乳育児を成功させるのには想像以上の大変さが待っていて、自分で全てをコントロールすることは出来ないということです。
私の場合、授乳による痛みは産後6週まで続きました。
とにかく授乳の度に乳首を刃物で切られているかのような激しい痛み。
「激痛」で悲鳴を上げることもしばしば。
もちろん出血したり、瘡蓋が出来たりもしました。
あまりの痛さに搾乳をして哺乳瓶で母乳を飲ませたりすると、量が増え過ぎてしまい胸が硬くなることも。
それでも定期的な搾乳で量を増やしたり、外出が出来たりして良かったのですが。
何度か乳腺炎になり高熱で身体中が痛い。
乳首保護カバーを当ててみたり、毎日乳首保護クリームを塗ったり、氷を当ててみたりと痛みを軽減するためできるだけのことをしましたが、授乳の時間が来る度に泣きそうになりました。
その時に頼っていたのが、メデラの乳首クリームとパッド。
母乳の量が1ヶ月ほどで安定してきたので、その後さらに2週間ほどは乳首の痛みを我慢して何とか乗り切りましたが、6週目に入って嘘みたいに乳首の痛みが無くなるまで、何度も辞めたいと思いました。
乳首の痛みはいずれ消えていくと言われてもそれが信じられなかったです。
母乳外来で助産師さんにマッサージを受けながら「量はちゃんと出てきてるから頑張ってくださいね。痛みが無くなる日が必ずきますから。」と励まされ続け、旦那も鶏肉のスープなどを頻繁に作って常に水分が取れるようサポートしてくれたお陰だと思います。
母乳育児は最初に大きい山が立ちはだかっていますが、それを乗り越えても簡単になるということではありません。
しっかり管理しないとしょっちゅう乳腺炎になったりしますし、母乳って実は凄い漏れるんですよね。暑い夏でも母乳パッドが離せません!
外出先でパッドを忘れたことに気付き焦ったことが一度や二度ではないですし、漏れてしまって洋服がずぶ濡れ+ミルクの匂いで覆われることも。
そして、母乳の量もママの体調によって波があるため、一度良く出てたからと安心できるものではありません。増えたり減ったりします。
結果的に私はとても運よく、職場に復帰して断乳するまで一年弱の間、完全母乳で娘を育てることができましたが、まあ、これは大変って感じでした。
ここでは母乳育児が大変だと言ってはいますが、ミルクだから簡単かというと、実はミルクも本当に大変なんです。授乳の回数は10~12回くらいから徐々に減っていきますが、それでも一歳までに1日に3〜4回は授乳をする必要があるので。季節に関係なく適度な温度のお湯を用意して、ミルクを作り続けるって本当に大変なんです。どこにも簡単な授乳の方法はないし、どちらがもっと大変なのかと比べることもなかなかできません。
これは自然分娩と帝王切開を比べてどちらが大変か比べようとするのと似たようなものです。
もし偶然知り合った先輩ママから何も聞いてなかったら、誰も母乳育児の大変さについて教えてくれてなかったら、周りでプロとして、家族としてサポートしてくれる人がいなかったら、娘が力よくおっぱいを吸ってくれてなかったら、栄養の高い食事が出来ていなかったら…
母乳育児は続けられなかったと思います。
女性の胸って、世間一般的には性的なものとして捉えられることが多いですし、私も出産を経験するまでは形とか大きさとかくらいしか気にしたことがありませんでしたが。笑
実はこれだけ実用的で生を延命させるための大切な役割があるんだと思うと、完全に見る目が変わってしまいました。
今となっては自分の胸に何も性的なものを感じないですし、どんな形と大きさであれ、女性の胸は美しいと考えるようになりました。
そして母乳育児が上手くいかなくても、今の時代は他にも赤ちゃんをサポートできる手段が沢山あります。
ママとして出来るだけのことをしたら、その後は思い通りにいかなくても自分を攻める必要も他人を羨む必要もない。
妊娠と出産で女性は既に体を捧げて赤ちゃんを成長させていますし、一年も経てば赤ちゃんは離乳を果たすことになります。
育児はそれぞれ違う形で進むことであり、母乳育児もまたそれの一つだと考えて良いでしょう。(助産師さんに怒られそうだな。笑)
また、皆んなやっていることだから「苦しい・痛い」なんて言えない、言う必要もないと思うのではなく、もう少し気兼ねなく体験を共有することで、母乳育児と授乳とはどんなものか、理解も広がって行くのではないでしょうか。
そうすれば周りの人も母乳育児がどれだけ大変なのか、ママたちがどれだけの痛みに耐えて、どれたけのことを諦めているのか(睡眠と食べたいものなどなど)を理解できますし、6ヶ月から1年という短い期間の間、全面的にサポートしていこうという心構えを持てるようになるのではと思います。
以上、母乳育児と授乳についてのお話でした。
個人的な体験を共有することで少しでも認識が広まっていくと嬉しいです。